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地下道の悪魔 【自作】 [日記・独り言]

~主人公~
タイキ クラスの中で一番のスポーツマン
ミム  ちょっと小型の女子
その他クラスメイト
*ー*ー*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*ー*-*-*-*-*-*-*ー*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
1.あこがれのミムが、ぼくに?

 朝から雨だった。それも、傘が壊れそうなほど、ザーザー降りの・・・・・・。
 
 梅雨だから、しかたないのかもしれない。けれど、そのせいで、体育の授業でやることになっていた、

クラスを二つに分けてのサッカー戦が、中止になってしまった。
 
 チーム名ブタックタイガーズーーエビじゃない黒いトラだーーーのセンターフォワード、

タイキは教室の窓の外に広がる真っ黒な雨空を見つめて、フーッと大きなため息をついた。
 
 せっかく、かっこいいとこを、ミムにアピール出来ると思ってたのに。
 
 斜め前の席のミム・・・・・・。ちょっと小型だけど、タイキは、去年のクラスがえ依頼、

なぜがずうっと気にかかっている。

 ほかの子なら、どうってこともない。でもミムだけは、目を合わすと、胸がドキドキして、

からだがカチンと縮こまって、タイキは口がきけなくなってしまう。

 そんなムミが、帰りがけ、校舎を出ようとしていたタイキを、とつぜん呼び止めた。

「タイキくん、待って。」

 振り返ると、スポットライトをあびたように光り輝くミムがいる。タイキの心臓は、

体が宙に浮くほど、大きくドキンとはずんだ。

「な、なに?」

「あのね、明日ーー土曜で休みでしょーーちょっと、付き合ってほしいんだけど。」

「明日?」

「うん。朝だけでいいの。なにか予定ある?」

「別に・・・・・・。」

「じゃあいいのね」

「ま、待てよ。急に、なんなんだよ?」

まだ振動はドキドキしているけど、自分から先に話しかけたんじゃないからか、

落ち着いてミムに受け答えられる。そのことをタイキはちょっと驚いている。

「タイキくん。クラス一番のスポーツマンでしょ。だから、ちょっと手伝ってもらおうと思って。」

「・・・・・・なにを手伝うんだ?」

「悪魔の写真を撮るの。」

「悪魔・・・・・・?」

タイキの目は、点になった

2.ぼくはミムのボディーガード


 ミムがオカルト好きだっていうことは、だれもが知っている。占星術、心霊現象、超常現象・・・・・・

仲のいい友達と、教室のすみで、ときどきペチャクチャおしゃべりしている。

「この前、古本屋で買った占星術の本に、メモがはさまれていたんだけど、それにこんなことが書かれてあったの・・・・・・」

 タイキに顔を近づけたミムが、声をひそめて言った。ミムの目はしんけんだ。オカルト大好き病の賞状は、

そうとう深刻らしい。

「大昔ーー人間や恐竜が発生するはるか以前ーー地球は、「外なる神」とか「大いなる古きもの」と

かよばれる、いく種類もの怪物たちに支配されていた。そして、その生きのこりが、ときどきわたしたちの目に現れる。

・・・・・・超常現象のほとんどが、その怪物たちのしわざだし、わたしたちが悪魔って

よんでいるのも、そいつららしい。」

「へえ。」

「その怪物たちの中に、クモの悪魔、アトラック・ナチャのがいて・・・・・・

いつもは地下深くかくれ住んでいるんだけど、毎年、6月6日のーーあしたよーー朝6時6分6秒ちょうどに、

新鮮な酸素を捕球しようと地上にでて、トンネルの真ん中を横切るの。ただし、一瞬のことだから、だれの目にもとまらない。」

「ふーん。」

「でも、地面に銀で出来た物を置いとけば、それに足を取られてストップするんだって。」

「・・・・・・なるほどな。それで、明日、そのなんとかってのが現れたことを待ち伏せして、

写真を撮ろうってわけだ。」

「そういうこと。アトラック・ナチャってのがどんなやつか、猛烈に興味があるし、うまく写真に撮れたら、

新聞やテレビで取り上げてくれるかもしれない。・・・・・・けど、一人きりじゃ、なんか怖いでしょ。」

大勢で待ってたら、警戒して現れないかもしれないし・・・・・・。それで、クラスで一番たよりになりそうな、

タイキ君に手助けしてもらおうと思って。」

「ボディーガードってことか・・・・・・。」

悪魔怪物なんて想像の産物だ。そんなもの、この世に存在するわけがない。まして写真だなんて、

ミムはどうかしている、とタイキは思う。でも、もしかすると、これがきっかけになって・・・・・・。

「付き合ってもいいけど・・・・・・近くにトンネルなんかないだろ。どっか遠出するのか?」

「トンネルなら、すぐ近くにあるわ。」

「え、どこ?」

「ほら、病院横の地下道。」

「あっ、あれか・・・・・・。」

 国道ぞいにある病院の角を曲がったところに、JRの線路の下をくぐる、歩行者専用の地下道がある。

せまくて暗くて・・・・・・本線とは別に、操車場への引き込み用線路もあるから、約3000mも続く長いトンネルだ。

「なるほどな。トンネルと言えないこともないかもな。・・・・・・でもさ、朝の6時だったら、

人通りがあるだろ。」

「大丈夫。昨日下見に行って来たけど、地下道、水漏れで通行止めになっていた。だからだれも来ない。」

「そっか・・・・・・。」

 むだ足だとは思うけど、仲よくなれるせっかくのチャンスだ。

「よし分かった。付き合うよ。」

「タイキは大きくうなずいた。

「よかった。じゃあ明日の朝、タイキ君の家によるから・・・・・・そうね、6時15分前に表で待ってて。

・・・・・・雨天決行だからね、そこから、このこと、皆には秘密だよ。だって、写真取れなかったら、かっこつかないもの。」

 早口で言ったミムは、

「それじゃね、バイバイ。」

 タイキに向かって手をふると、

「モリエ、待って!」

 大きめのピンクの長靴をギュッギュッとならして、横を通りすぎていった仲良しのモリエのあとを追った

3.クモの悪魔なんて本当にいるの?
 
家族の目をさまさないように、そっと家を出ると、出番を待ちかねていた太陽が、

雲一つない青空で、かがやいている。雨は夜のうちにやんだらしい。
 
タイキは、すぐにやってきたミムと2人で国道に出て、病院の角を曲がった。

せまい通りの突き当たり、金網フェンスの向こうを、のぼりの電車が、

ゴーッよ騒音を立てて走り去っていくところだった。

 フェンスのわきに、地下道の出入り口がある。階段前にはロープが張ってあって、「通行禁止」の

カードがぶらさがっている。

 その階段の下で、証明の消えた地下道の暗やみが、口を開けて2人を待ちかまえていた。

 悪魔なんているわけがないけど、なんか薄気味悪い。地下道を見つめたまま、

タイキがボーッとたたずんでいると、

「ぐずぐずしてたら間に合わなくなっちゃう。早く行こう」

ミムがロープを持ち上げて、タイキのひじをツンとつついた。

「わかってるさ」

大きく息をついたタイキは、気をきかせて待ってきたペンライトの明かりをつけ、

「行こうぜ。」

 ミムの先に立って、地下道に続く階段を下りていった。

 出入り口付近はポーッと明るいが、地下道の中は真っ暗だ。ボタボタと、

あちこちで水がしたたる音がしている。

 2人は、一歩一歩足元を確かめながら、湿気でよどんだ空気をかきわけるようにして、

ゆっくり前に進んだ。タイキのペンライトの明かりが、水たまりだらけの地面を、

生き物のように、はいまわる。

「この辺りが、ちょうど、地下道の真ん中みたいね。」

 立ち止まったミムが家から持ってきた銀色の小皿を、そっと中央の水たまりの中に置く。

それから3、4m後ろに下がって、ポケットから小さなカメラを引っ張り出し、

「暗くないと出てこないと思うから、明かりを消して。」

 お父さんのでも借りてきたのだろう、大きな腕時計の、

緑色に光る文字盤を見つめていった。

「10、9、8・・・・・・。」

 暗やみの中で、ミムは小声で秒読みを始めた。そして、

3のところまで来たところで数えるのをやめて、カメラを構えた。
 
 なにもおきるわけないと思うけど、もしかして・・・・・・・。タイキは息を止めて、

暗やみに目をこらしめた。

 その時だった!
 
 右側壁の一部が、鈍く光ったかと思うと、そこから、稲光の用に青白く光る何本もの

細い糸が、

 ヂヂヂッ

と、音を立てて飛び出した。

「あっ!」

 二人は同時に声を上げた。 
 
 
 
 

 
 
4.ついに現れた!アトラック・ナチャ

波うつようにして放射状に広が

った電光の糸は、角度を変えると、

ミムが置いた銀の小皿に集まって、

ボッ

小さな爆発を起こした

な、なんだ。何が起きたんだ!?

悪魔?
 
 まさか!きっと壁にうめてあった電線が、ショートしたんだ。タイキが、

爆発の閃光でくらんだ目をゴシゴシこすって、暗やみを見すかすと、あたりは、

ボーッと明るくなっている。はじけちった青白く光る糸が、地下道の天井と壁に張りついて、

星のように周囲を照らしているのだ。

「み、見て!」

 ミムが興奮したように言って、前方の暗がりーー小皿を置いた場所だーーを指さした。

 そこに、大きな大人がうずくまっているような、黒い影があった。

 そいつは、黄色の霧のような息をはきながら、歌うようにつぶやいていた。

 しるるしるる

 いつの間にか、生ゴミが腐ったような臭いがあたりにたちこめている。

「現れた!」

 ミムが、叫ぶように言ってカメラのシャッターをきった。

 ビカッ

 フラッシュが光る。

 それに反応したかのように、黒い影がムグムグとうごめいて、2人の方に近づいてきた。

「ああっ!」

 この世のものとは思えない、あまりにもおぞましい姿に、2人は息をのんだ。

 ぶくんをふくれた腹部。毛ガニの甲羅のような胸部。青白い糸をせわしく紡いでいる長い手と、

足・・・・・・。

 それは、一見、全身毛だらけの巨大な黒クモのようだった。だが、そうじゃない。節のある何本

もの手足の間に、人間の頭がいこつに似た、ブヨンとした黒いビニール風船のような、

耳と鼻のない頭部がある!

 そいつは、邪悪そうな赤い目をかがやかせて、そのすぐ下の、むき出しの牙のならんだ大きな口から、

黄色の息と一緒に、

しるるしるる

 つぶやきのような声をもらしていた。

 ミムの言ってたことは本当だった!

「あ、悪魔だ!」

 テレビゲームやマンガや映画じゃなく、現実として目の前に現れた恐怖に、

タイキの心臓は一瞬とまり、そのあと爆発しそうな勢いで、ドドドドと動き始めた。

足元で発生した冷たいふるえが、体をはいあがる。ひざがガクガクふるえ、全身にゾーッと鳥肌が立つ。

タイキはいまにも気を失いそうだ。なのに、ミムは落ち着いている。

「そうよ、こいつがアトラック・ナチャよ!」

 小さな声でさけぶように言って、またシャッターをきった。

 だ、だめだ!写真なんか撮っている場合じゃない。早いとこ逃げ出さないと、なにされるか分からない。

「ミ、ミム!」

 タイキは、あわててミムの肩をつかんだ。


しるるしるる

 足にまとわりつく銀の小皿を、カランとけとばしたクモの悪魔が、気味の悪い赤い目をグルッと

まわして、2人をにらんだ。

5.ミムを守らなきゃ!

「や、やばいよ。ミム!」

「うん、行こう!」

やはりミムも危険を感じている。おびえた目をして、振り返った。

タイキは、ミムの手をぎゅっとにぎりしめ、走り出そうとした。しかし、遅すぎた。

しゃ!

クモの悪魔が、両手で紡いでいた青白い糸を、2人に向かって投げつけた。

そんなことでやられるようなタイキじゃない。タイキのばつぐんの反射神経が、すばやく反応する。

ミムの肩をだいて、とっさに身をふせた。2人の頭を飛び越えた糸は、クラッカーからはじけた紙テープの

ように大きく広がり、クモの巣のフェンスとなって、2人の逃げ道をさえぎった。

「こんなもの引きちぎってやる!」

タイキは糸に手を伸ばした。

その指が、

バチッ!

スパークして、うでに電流が走った。

「あいたっ!」

まるで裸電線だ。これを破るには、ゴム手袋とペンチがいる。どうしたらいいんだ?

タイキはクモの悪魔に向き直った。

しるるしるる

クモの悪魔が、地をはうように、ゆっくり2人に近づいてくる。大きくあけた口から、

黄色の液がダラダラと流れ落ちている。

ミムに見込まれて、ガードを頼まれたんだ。なんとしてもミムを守るぞ!ブルッと頭をふって

勇気をふるいおこしたタイキは、

「あいつをおさえつけるから、その間に、あっちから逃げろ!」

クモの悪魔を見すえたまま、向こう側の出口を指さす。

「でも、それじゃタイキ君が・・・・・・。」

「いいから、行くんだ!」

怒るように言ったタイキが、頭をグっともたげたクモの悪魔に飛びかかろうと、1歩踏み出した時だった。

ズズズ

地下道がまるで身震いするように震動した。

な、なんだ?

タイキの、動きが止まった。クモの悪魔も、動きをとめた。

地震・・・・・・?

いや違う。上下の電車が、どうじに地下道の上を通りすぎようとしているのだ。

ゴゴゴゴゴオー

電車がやってきた。頭の上で轟音が鳴り響いていた。

ズズズズズ

長雨で地盤がゆがんでいたのか、いつもより震動が激しい。

ビシシッ

水漏れで弱っていた壁に亀裂が入った。

次の瞬間!

壁一部がボンッと破裂し、そこからドッと水がふき出した。

埋設してあった水道管が破裂した?長雨でたまっていった地下道は、あっと言う間にプールのようになり、

2人が気がついた時には、足首の上まで水がきていた。

だが、ふき出した水のおかげて、逃げ道をふさいでいた悪魔の糸は、その力を失った。

シュパッ

水につかったせいで、まぶしく光ってショートして、ばらばらにはじけたちった。

いまだ!

「ミム!」

「タイキ!」

声を掛け合った二人は、あとも見ずに一目散に逃げ出した。

6.2人だけの秘密、そしてふたたび・・・・・・ クモの悪魔そ姿は、写真に写っていなかった。黒い煙か霧のようなものが、ぼんやりと写っているだけだった。

 悪魔が現れた痕跡も、地下道に残っていなかった。悪魔は、ふたたび地下に身を隠したのだ。

 証拠がないから、クモの悪魔を言ってもだれも信用してくれそうもない。ばかにされるのが落ちだ。だから、

ミムとタイキは、地下道でのことを、だれにも話さなかった。

 二人して、あれだけ怖い思いをしたのに、何の収穫もなかった?・・・・・・いや、タイキには、

大きな収穫があった。ミムと顔を合わせても、胸がドキドキしなくなったし、オカルト話が多いけど、

二人きりで話すようにもなった。

 しかし、夏休みが始まってからは、合うこともなくなった。

 そのまま日にちがたって・・・・・・8月に入って一週間過ぎた、とんでもない暑い日の午後。

 またもとどおり、話もしなくなってしまうのかなぁ・・・・・・。タイキが、ごろんとベットni寝ころがって、

うつらうつらしながらミムの事を考えていると、とつぜん、本人から電話がかかってきた。

「やあ、ミム。何か用?」

タイキの声がはずむ

「うん、明日付き合ってほしいんだけど・・・・・・実はね、8月8日の8時8分8秒に、海岸に14個

の石でピラミッドを作っておいて笛を吹くと、海から・・・・・・」

 タイキのあごの筋肉が、ひきつけるようにヒクッと動いた。





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コメント 2

kaoru

こんばんは。
ドキドキしつつ拝読させて頂きました。
自作って凄い!ですね。
海から一体どうなるのか?
続きが気になりすぎてしまいます。
by kaoru (2009-07-06 19:46) 

☆LIZLISA♪Livly☆

こんにちは^-^
いつもniceをありりです(・w・;;
自作のお話すごいですねっ★
by ☆LIZLISA♪Livly☆ (2009-07-06 20:03) 

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